放課後は、秘密の時間…
市川君はあたしから身体を離すと、いつの間にか手に持った携帯電話を眺めてる。

親指でそれを操作すると、すぐに満足そうな表情を浮かべた。


「結構よく撮れたかも」

「……?」

「ほら、先生」

「……う、そ……」


笑いながら彼が見せてきた、携帯電話の画面。


それを目にした瞬間。

あまりのショックに、言葉を失った。


何度瞬きしても、変わらずそこにある画像。


それは――……

あたしと彼が“キスしている瞬間”だったんだ。


「ね、キレイに撮れてるでしょ?」

「……っ……」


言葉が、耳をただ通り過ぎていく。

まるで見せつけるみたいに、彼は携帯電話をふるふると振ってみせた。


今のシャッター音は……


「やめて、そんな画像っ……」


自由になった手を、反射的に携帯電話に伸ばした。

だけど、あたしの手は虚しく空を掴んだだけ。


市川君はあたしの動きを軽々と交わしながら、楽しそうに笑う。


「――ねぇ先生?こんな写メ出回ったら、大変なことになるんじゃない?」

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