放課後は、秘密の時間…
言い訳なんか、できないよ……


あのキスは、市川君が無理矢理したものなんかじゃない。

あたしも望んでしたものだったんだもの。


「あかり……何でだよ……」


大也の声が、震えてる。


それは怒ってるときのものじゃなくて……

すごく傷付いたような声だった。


「頼むから、言い訳してくれよ?キスもこの痕も、お前さえ違うって言ってくれたら、俺、信じるから!」

「……だいや……ごめん…ごめんね……」

「謝ってほしくなんかねぇんだよっ……」


胸が痛い。

でも、あたし以上に、大也の方が苦しんでる。


大也の方がきっと痛い。


大也を、傷つけた……

こんなに優しい人を、あたしが――……


「帰るっ……」

「大也、あたしっ……」

「このままここにいると、俺、お前にひどいことしそうだから」

「………」

「今度、ちゃんと話そう。俺、今はまともに話せねぇ」


吐き捨てるように言って、大也は部屋を出ていった。

ドアが閉まる音だけが、無情に響いて。

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