放課後は、秘密の時間…
「遅くなってごめん!圭のヤツが、なかなか帰してくんなくてさ」

「ううん。あたしも今、来たところだから」

「マジで?なら良かった」


はぁはぁと呼吸を整えて、市川君は安心したように微笑んだ。


「走って来たの?」

「だって、先生待たせてるって思ったら、一秒でも早く来たくて」

「………」


何で、そういうこと言うの?

これから、あたし、市川君にひどいこと言うのに……


決心が揺らぎそうになっちゃうよ。


「先生が美術室来てって言ってくれたの、初めてだし。俺、朝からすげー嬉しくて」

「……うん」

「もしかして、俺のこと好きになった?」


冗談気味に言った市川君に、思わず、頷いてしまいたくなった。


――「好きだよ」って……


そう言えたなら、どんなに楽だったんだろう?


「う、嘘だよ!そんな顔すんな……って、先生?」

「……話が、あって……」


あたしの声、震えてる。


「話って?」

「あの、ね……」

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