放課後は、秘密の時間…
誰もいない教室に滑り込んだ瞬間、涙が溢れ出した。


大きな雫が次々に落ちていく。



こんなに苦しいなんて思わなかった。

苦しくて、胸が痛くて、息さえ上手くできない。



市川君が好き。

本当は、好きなの。


柔らかくて茶色い髪も、呼びかける低い声も、あたしをからかうときに見せる、あの笑顔も。


どこがなんて言えないくらいに……

全部が好きなの。


強引なクセに、照れながらキスする。

どこにでもあるようなお弁当に感動して、おいしいって食べてくれる。


あたしのこと、好きだって――

まっすぐに気持ちをぶつけてくれる。


そんな市川君が好き。



――でも……

大也をこれ以上、傷つけられない。


だから……市川君、ごめんね……


あたし、嘘つきだから。

市川君を好きじゃないって嘘をつくよ。


あたしから市川君への、最後の嘘を。

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