放課後は、秘密の時間…
「え……?」

「――初めてデートした日も、ここに座ったよな」

「……覚えてて、くれてたの?」


小さく聞くと、当たり前だろ、と大也が笑った。


「あの頃に戻ったつもりでさ、もう一度初めからやり直そう」

「……大也……」

「まだ、間に合うから」


大也、優しすぎるよ……

あたし、ひどいことをしたのに……


「な?」


あたしが好きな、いつもの笑顔。

さっきまであった怒りは、もうそこには感じられない。


急に涙がこみ上げてきて、あたしは何も言えずに何度も何度も頷いた。


「泣くなよ、あかり」

「…だ…って……」


大きな手が、ぽろぽろこぼれた涙を拭っていく。


「今日からまた、よろしくな」


どうして、こんなに優しい人を、あたしは傷つけてしまったんだろう?

きっと、大也以上にあたしを大切にしてくれる人なんかいないのに。


温かい大也の想いに、あたしの胸はいっぱいになって。

涙は、いつまでも止まらなかった。

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