放課後は、秘密の時間…
教師を目指して、実習に来た。


きっと、毎日忙しさに追われてるうちに、実習はあっという間に終わって……


でも、楽しい思い出もいっぱいできるはずで。

最後には涙ぐみながら、色紙と花束なんか受け取ったりして。


「実習大変だったね」なんて、大也と、他の高校に行った友達と笑いながら話すはずだった。


なのに、あんな写メなんか撮られて……

あたしはこの先どうなるの?


きつく目を閉じると、市川君が脳裏に浮かんでくる。


大也がいるのに――

それ以前に、『生徒と付き合う』なんて絶対ありえない。


しかも、キスなんかされて……


思い出して、あたしは思い切り唇を手で拭った。


市川君の思い通りにしかならなかった悔しさと、これからへの不安に、我慢していた涙が溢れ出して。

パタパタ落ちた雫は、スカートに小さなしみをいくつもいくつも作っていった。


実習は、まだ始まったばかり。

残りの日数を考えると、教師なんか諦めて逃げ出したい気持ちが押し寄せてくる。


何かも放り出して、今すぐ大也に会いに行きたい。

だけどそんなこと、許されるわけがない。



この日から、彼とあたしの放課後は、特別な時間になったんだ。


――二人だけの、“秘密の時間”に……

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