放課後は、秘密の時間…
唇が触れそうになったその瞬間、


『――先生っ!!』


市川君の声が、耳の奥に響いた。


「やめてっ……」


気が付いた時には、そんな言葉が漏れていた。

動きを止めた大也が、怒りに燃えた目であたしを見つめてる。


「――あかり」


強く名前を呼ばれて、思わず体がビクッと震えた。


優しかった大也は、もうどこにもいない。

今、目の前にいるのは、あたしへの不信感と怒りに溢れた大也だ。



――もう、ダメだ。


あたし達、やり直しなんか出来ないよ……

出来るはずがなかったんだ。


一度芽生えた不信感は、そんな簡単に消えるものじゃない。


急に涙がこみ上げてきて、あたしはそれを必死に抑えながら、言葉を探した。


「大也、あたし達……」

「別れねぇ」

「……大也?」

「別れねぇよ!」


大也が怒鳴ったのに同時に、強く、強く抱きしめられた。

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