放課後は、秘密の時間…
「……あかりちゃん、あとよろしく。俺、授業に戻るよ。高田うるせぇから」

「うん、ありがとうね」


静かにドアが閉まる音がして、保健室にはあたしと市川君が二人きりになった。


市川君は相変わらず、苦しそうに息をしている。

ベッドの横にある丸イスに腰掛けて、あたしは少しズレた布団を掛け直した。


「……何で、こんな熱で学校なんか来たのよ……」


調子が悪いなら、休まなきゃダメだよ……


「だって…センセ…に、会えねぇ、じゃん……」


切れ切れに話す言葉に、あたしの胸は苦しくなる。


「そんな理由で、」

「俺に、とっては…大事なんだ…って」


――市川君、バカだよ……


あたしに会いにくるために、そんな体で来るなんて。


「も、いいから、眠って」

「……やだ。寝たら、先生、どっか…行くんだろ?」


熱い指が、あたしの手をぎゅっと握った。


「行かないよ」

「……嘘だ」

「本当だよ。ずっと……ずっといるよ」


市川君の目が覚めた時も、傍にいるよ。

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