放課後は、秘密の時間…
「――37度6分、か……」


体温計を見て、あたしはほっとした。

少しは、市川君の熱も下がったみたいだ。


ここに来たときは、39度近くあったから……

薬がちゃんと効いたみたいで、本当に良かった。


壁にかかった時計を見ると、保健室に来てから二時間以上が経っていた。

市川君は、今もまだ眠り続けてる。


「市川君……」


眠ったままの市川君に、あたしはそっと声をかけた。


名前を呼ぶだけで、胸がぎゅっと苦しくなる。


「こんな体で、無理しちゃダメだよ……」


ひどいこと沢山言って、いっぱい傷つけたのに……


――なのに、どうして、あたしなんかに会いに来たの?


まだ、あたしのこと、少しは好きでいてくれてるって……

そんな期待したくなっちゃうよ。


嬉しいって思っちゃうよ……


「この前ね、言ったこと……ホントは全部嘘なんだよ……」


意識のない市川君に、あたしは静かに話しかけた。

届かない今だから言える、あたしの本当の気持ち。

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