放課後は、秘密の時間…
「あ、ごめん、先生。俺、汗臭いだろ?」


焦ったように言って、市川君の腕が突然離れていった。


確かに、市川君のYシャツからは少しだけ汗の匂いがしてる。

あんな高熱だったんだから、無理もない。


「体、もう苦しくない?」

「今は平気。先生のおかげだよ」

「もう、絶対無理しないでね……」


市川君が倒れた時に、心臓が凍りつくような気持ちだったんだよ。

本当に、本当に心配したんだから……


「先生、あんまりそういう顔しないでよ」

「?」

「抱きしめたくなる」

「ふ、普通の顔だよ!」

「普通じゃねぇよ、全然。涙目だし上目遣いだし。俺、さっきからかなり我慢してるんだけど」


そんなの、あたしのせいじゃないもん。

市川君、やっぱりイジワル。


あたしは市川君の胸に、おでこをコツンとぶつけた。


「先生?」

「我慢しなくて、いいよっ……」


顔が熱いってことは、きっと今、赤くなってるはずだ。

自分でも、大胆なことしてるって思う。

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