放課後は、秘密の時間…
こんな軽いキス一つでも、市川君はあたしから余裕を奪い取ってしまう。

一瞬で、頭が真っ白になっちゃうんだ。


「センセ……」

「……市川く…ん…」


――って、ダメ!


「スト、ストップ!」

「先生?」


驚いた顔をした市川君から、あたしはパッと離れた。

大事な話があるのに、こんなことしてちゃ話せなくなっちゃうよ。


「あの、話があって」

「話?なに?」

「明日ね……彼と会うことになってるの」


明日、土曜日。

あたしは、大也と会う約束をしてる。


もう一度、会って話したい。


電話でそう言ったあたしに、大也はただ一言、わかった、と頷いてくれた。


「彼が納得してくれるかわからないけど……今のあたしの気持ち、ちゃんと話してこようって思ってる」


大也とはもう、一緒にいられないって。

あたし、大也よりも好きな人が出来てしまったんだって……


大也を傷つけるけど、言わなきゃいけない。

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