放課後は、秘密の時間…
生徒達は部活に行ったのか、もう帰ったのか、薄暗い廊下はしんとしていた。

だけど、C組の教室からはあかりが漏れている。


斉藤君、残ってるかな……?


小さく開いたドアの隙間から、中を覗き込もうとすると、


「――それでさぁ……」


話し声が聞こえてきた。


隙間から目をこらすと、男子生徒が何人かいるみたいだった。

さすがに、一人ひとりの顔まではよく見えない。


「二宮センセー、どうなったワケ?」


……今、あたしの名前、呼んだ?

って、ことは、あたしの話をしてるの?


「なぁ、拓真?」


……タクマ?

タクマって、もしかして――……


「――その話はもういいだろ?」


答えた低い声は、あたしがよく知ってるものだ。


間違えるはずない。

市川君の声。


「よくねぇって。お前、二宮落としたわけ?」


――え……?

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