放課後は、秘密の時間…
急に声を掛けられて、体がびくっと震えた。


「……斉藤、君……」


教室の中では、まだ会話が続いてる。

話が盛り上がっているのか、廊下にいるあたしと斉藤君に気付く気配は全くない。


「どうしたの?こんなとこで」

「……斉藤君のこと、探してたんだよ」

「え、俺?」

「日誌、ちゃんと書き直してね?これ、高田先生も見るんだから」


自然と顔に張り付いた笑顔。


心はこんなに空っぽなのに、何であたし、笑えるんだろう……?


「げ、そうなの?そりゃごめん」

「いいよ。書き終わったら、机の上に置いといてね」

「はーい、わかりました」


斉藤君も、「賭け」てたのかな……?

無邪気な笑顔に、不信感がこみ上げてくる。


日誌を彼に渡して、あたしはなんとかいつも通りに微笑んだ。


「今までありがと、楽しかったよ。斉藤君、元気でね?」

「あかりちゃんもな!」

「……それから、市川君にも言っておいてくれないかな?――美術係、お疲れ様、」


そして……


「さよなら、元気でねって……」

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