放課後は、秘密の時間…
言葉にした瞬間、胸の奥が少しだけ疼いた。


「拓真なら、多分まだ残ってると思うよ。呼んでこようか?」


教室のドアを開けようとした斉藤君の手を、思わず引きとめた。


「いいの。そんな、たいしたことじゃないから。ね?」

「そう?じゃー、伝えとくな!」

「うん、お願いね……」


市川君に、直接なんか言えないよ。

だって、どんな顔して、会ったらいいの?


あんな話を聞いた後なのに。


市川君は……

あたしと同じ気持ちなんかじゃなかったのに。


「それじゃあね、斉藤君」

「おう、バイバイ!」

「バイバイ」


手を振って、あたしは彼と別れた。



職員室までの廊下が、やたらと長く感じる。


こんなに遠かったかな……


あたし……何してるんだろう?

何で、こんなとこにいるんだろう?


もう、何にも考えられない。

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