放課後は、秘密の時間…
――職員室に戻った後。


実習の反省会を終えて、あたしはそのまま、先生方に居酒屋に連れて行かれた。


先生方が、「実習お疲れ会」を開いてくれたんだ。


もともとお酒が弱いあたしは、ほとんど飲めなかったけど……

でも、気分を紛らわせるのには、ちょうど良かった。


彼のことを考えないですむのなら、何でも良かったんだ。



だけど、やがてそれもお開きになって、部屋に一人戻った時……

突然、胸が何かに詰まったように、ぐっと苦しくなった。


思い出したくなんかないのに、廊下で聞いた会話が鮮明に蘇ってくる。

同時に、彼の姿が浮かんだ。


……市川君……


市川君は、あたしのこと、好きなわけじゃなかったんだ。


ただ、友達と賭けていただけ。

あたしを、自分のものに出来るかどうか。


きっと、暇つぶしのゲーム感覚でやったこと。


今までのも、全部、嘘だったの?


好きだって言葉も、優しく抱きしめてくれた腕も。

ただ、あたしを「落とす」ためだけに、用意したものだったの?


そんなことにも気付かないで、あたしは――……

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