放課後は、秘密の時間…
「――下描きが終わったら、色塗りを各自で始めて下さい」


声をかけると、は~い、と生徒がバラバラに返事をする。



実習4日目にして、初めての授業。


教室は間違いそうになるし、板書してるときに力を入れすぎてチョークは折っちゃうし。

内心、ものすっごい緊張してる。


実際、「センセー緊張しすぎ~」なんて、生徒にも笑われたし……

……はぁぁ。


――って、ダメダメ。

気を取り直して!


今は、みんなに静物画を描かせてる。

この題材は、谷村先生がやってたもので、あたしはそのまま引き継ぐ形で授業をしてるんだ。


詳しい説明なんかは全部谷村先生がやってくれてたから、あたしの役目はみんなの周りを回って、時々アドバイスをすることくらい。


「二宮先生」


そうそう、こんな風に声をかけられたら生徒の方に行って……


あたしの足は、自然とその動きを止めた。


な、なにビクビクしてるんだろう?

相手は生徒だよ?


でも、生徒は生徒でも――


「……どうしたの?市川君」

「少し、先生に見てほしいんですけど」

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