放課後は、秘密の時間…
外に一歩出ると、今にも雨が降り出しそうな曇り空が広がっていた。

いっそ、雨が降ってくれたらいい。


そしたら、泣いても、雨が涙を隠してくれるだろうから……



あたしが向かった場所は、大也と待ち合わせをした喫茶店だ。

ドアを押して、店内に足を踏み入れる。


さっと見渡すと、大也はまだ来てないみたいだった。


市川君とあんなことにはなったけど……

大也と、やり直すつもりはないんだ。


そんな資格、あたしにはないから。

市川君がダメだから大也、なんて出来るわけないよ。



「――よぅ」


そんな声に顔を上げると、いつの間にか来ていた大也が、向かいの席に腰掛けた。


「……久しぶり。ごめんね、急に呼び出したりなんかして」

「いや、いいよ。お互い、実習お疲れ。どうだった?」


当たり障りのない話題に、あたしも合わせる。


「なんとかやり終えたって感じかな。大也は?」

「俺も、同じってとこ」

「そっか……」


会話が切れると、重い沈黙が流れた。

あたしが必死に次の言葉を探していると、大也の方が口を開いた。

< 203 / 344 >

この作品をシェア

pagetop