放課後は、秘密の時間…
まさか、授業中に何かするなんてこと……

いくらなんでもありえないよね?


周りには他にも生徒がたくさんいるし、後ろには谷村先生も立ってる。


大丈夫、大丈夫。


言い聞かせて、あたしはおそるおそる市川君に近づいていった。


「どこか直せばいいとこあります?」


市川君は、にこにこしながら自分の静物画を指してる。


……あれ?

なんか普通?


やっぱり昨日のって、からかってただけなのかな?


だとしたら、あたし、バカみたいだ。

一人で色々考えて、悩んだりして。


「先生?」

「あ、ごめんね。えぇっと……これとこれの距離間、あとりんごの陰影を少し直せば、もっとよくなると思うよ。底の方はもう少し暗く見えるでしょ?」

「ありがとうございます」


市川君は、昨日の彼とは全く別人そのもの。

態度も真面目だし、とても無理やりキスして、あたしを脅した張本人とは思えない。


言葉遣いも、なんか違うし。


彼のデッサンは結構繊細で、絵は人を表すっていうから……

市川君も繊細なのかな?、なんて思う。


アドバイスし終えたあたしが、他の子のところにも行こうとしたときだった。

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