放課後は、秘密の時間…
「――次の電車がくるまで、あと3分だって」

「そう……」


たった3分でも、ひどく長いものに感じられる。


もしも、彼がここまで来たら……


ううん、追いかけてくるはずない。

だって、市川君はあたしのこと、好きじゃないもの……


『――電車がまいります。 黄色い線の内側に下がってお待ち下さい』


アナウンスが流れて、ほっとしたせいか、体中の力がすっと抜けていった。


だけど――……

少しだけ、後悔してるあたしもいる。


さっき、振り向けば良かったんじゃないかって。

彼の元へ行くべきだったんじゃないかって。


あんなにハッキリ、彼の本音を聞いたはずなのに……

まだ、心のどこかで期待してるんだ。


もう、どうにもならないことなのに……


気持ちが大きい分だけ、苦しくて。

一度は収まったはずの痛みが、またズキズキと疼きだした。


彼のことは、忘れなきゃ……


顔を上げた、その時――


「――先生っ!!」

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