放課後は、秘密の時間…
「……うみ……」


目の前に広がっていたのは、どこまでも蒼い海。

驚いて呟いたあたしに、大也がふっと笑った。


「うん、海」


あたしの手を引いて、大也が砂浜に降りていく。


打ち寄せる静かな波の音と、潮の香りが気持ちいい。

張り裂けそうな胸の痛みが、少しだけ薄れていった。


「どうして、海……?」

「誰もいないとこって思ったらさ、ここしか浮かばなかった」


確かに、ここにいるのはあたし達だけみたいだ。


「まぁ、季節外れだけどさ」

「……うん」

「しかも、天気も悪いし」

「……うん」

「でも、ここには俺しかいないから」


大きな手に、頭を優しく撫でられる。


「あかり、思いっきり泣いていいよ」

「……電車の中で、いっぱい泣いたよ?」

「でも、泣き足りないんじゃねぇ?」

「……平気、だよ……」

「平気じゃねぇよ」

「……っ……」

「俺の前で、無理するな」

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