放課後は、秘密の時間…
大也の腕が、あたしの体を包み込む。

壊れそうだった心ごと抱きしめられて、


「こうしてれば、俺も見えないし」


優しい――、

どこまでも優しい、大也の声。


分かってる。

大也がわざとあたしを泣かせようとしてること。


でも、もう張り詰めてた感情を抑えることは出来なくて。

我慢してた涙が、いとも簡単にこぼれていった。


瞳から落ちた大きな雫は砂に吸い込まれてく。


「……ぅっ……ぇ……」

「泣いたほうが楽になるから」


……ごめん。

ごめんね……


大也と一緒にいるのに、市川君のことを想って泣いてばかりで。


大也は、自分のことを卑怯だなんて言ったけど……

あたしはそうは思わないよ。


だって、あたしの方がきっと何倍もズルイ。


都合のいい時だけ、すがってるから。

大也の手を離さなきゃいけないのに、それが出来ないでいるから。


声を押し殺して泣き続けたあたしの背中を、大也の手がずっと撫でていた。

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