放課後は、秘密の時間…
夕日が沈んで、水面がオレンジ色に染められた頃――……


「――スッキリした?」


大也が腕を緩めて、涙が止まったあたしの顔を覗きこんだ。


「うん、ありがと……」


思い切り泣いたせいか、心が少しだけ軽くなったような気がしてる。

涙と一緒に、重い不安も流れていったのかな……


「じゃ、あかり、コレ渡すよ」


あたしの手の平に、大也が乗せたもの。

それは――、


「……え?」


ここに来る時ももらったもの。


「帰りの切符」


顔を上げると、大也が切なげに微笑んだ。


「本当は――本当は、あかりを帰すつもりなんかなかった。今だってさ、迷ってる」


でも、と続けて、


「あかりが今一番傍にいてほしい相手は、俺じゃないよな」

「……大也?」

「言っただろ?俺には、お前の気持ちが分かるんだって」

「………」

「だから、さ。今から、あいつのとこ行けよ」

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