放課後は、秘密の時間…
市川君のところへ……?

でも、そんなこと、


「できないよ、あたし……」

「このままでいいはずないって、思ってるんだろ?」

「……それは、」

「あいつ、必死にお前のこと追いかけてきてた。人目も気にせずに、お前のこと呼ぶくらい、お前しか見えてなかったよ」


大也の言葉に、市川君の声が蘇る。


『先生、行くな』って。

雑音を掻き分けて届いた、あたしを呼び止めたあの声。


「何があったのかわかんねぇけどさ、一度ちゃんと話して来い。今なら、まだ間に合うから」


もう一度、市川君と話すことなんて、出来ないよ。

だって、怖いの。


遊びだったんだって、彼の口からハッキリ聞くことが。

もう一度傷つくことが……


「あいつのこと、好きなんだろ?」


聞かれて、首を横に振ることなんて嘘でもできなかった。

自分の気持ちを偽れない。


市川君が好き……

好きで、好きで、もうどうすることも出来ないくらいに――……


「なら、行ってこい」

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