放課後は、秘密の時間…
「……でも、大也は?」


あたしを慰めるために、ここに連れて来てくれた大也。


そんな大也を、一人置いてくことなんて出来ないよ……

あたしだけが帰るなんて――


「俺のことはいいから」

「いいわけな、」

「お前が今日、俺を呼び出したのは、別れ話をするためだったんだろ?」

「それは……」

「分かってる。そうなることを知ってて俺も来たから」


ぎこちなく、だけど無理矢理にでも笑ってみせたのは、きっと大也の精一杯のあたしへの気遣い。

あたしが自分を責めないようにって――


それが伝わってくるから、胸の奥が掴まれてるみたいに痛い。


大也に出会って、大也と一緒に時間を過ごしてきて。

想われることがどんなに幸せなのは知ってた。


でも、時にそれがこんなに辛いなんて、知らなかったよ……


「俺はさ、今でもあかりのこと好きだよ。別れたくなんかねぇし、あいつに渡したくもないって思ってる」


大也の指先が、あたしの頬に残った涙の痕をそっと拭った。

その温もりはすぐ離れていく。


「でも、俺にはあかりを泣かせることは出来ても、笑わせることはできねぇんだよな」

「………」

「悔しいけど。多分、それが出来るのは、あいつだけだろうから」

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