放課後は、秘密の時間…
大也と一緒にいても……

この心に空いた穴を埋めることは、出来ないんだ。


市川君の存在は、それくらい、大きくて――……


「だから、今すぐあいつのとこ行ってこい」

「大也……」

「お前のそんな顔、俺、見たくねぇんだよ」


手の平にある切符を、大也の手がぎゅっと握らせた。


「一日早いけどさ……あかり、誕生日おめでとう」

「え……?」

「明日、だろ?」


そうだ……

明日は、あたしの誕生日。


“実習が終わったら、どこか旅行でも行こう”


そう、大也と約束してた――……


「覚えてて……くれてたの?」


あたしは大也を裏切って、たくさん傷付けてきたのに。

大也よりも、市川君を好きになってしまったのに。


あたしなんかの誕生日を覚えててくれたの?


「当たり前じゃん」


頷いたのを見て、視界が一瞬で歪んだ。

ただこみ上げてくる切なさに息が詰まる。

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