放課後は、秘密の時間…
手の甲に重ねてる大也の指に、かすかに力がこもる。


「これは……俺からお前への最後の誕生日プレゼント」


分かってたけど、『最後』の一言が悲しくて――


「幸せになれよ、とはさすがに言えねぇけど……頑張ってこい」


少し涙声の大也。

その表情は滲んで見えない。


大也はどんな気持ちで、市川君のところへ行けって言ってくれた?

それを思うと、止むどころか、涙はどんどん溢れて。


大也を好きだった分だけ、今がすごく苦しい。


「だい、や……り、がと」

「礼なんか言うなよ」

「……っ……」

「泣かないで。――ほら、行け」


あたしの背中を、優しい手がそっと押した。


二年半、ずっと一緒にいた大也。

最後の最後まで、あたし、大也に助けられてばかりだったね……


「――じゃあな、あかり……」


こんな泣き顔を見せたら、きっと大也は心配するから。

背中に掛けられた声に振り向かずに頷いて、あたしは歩き出した。


もう一度、彼のところへ行くために――……

< 220 / 344 >

この作品をシェア

pagetop