放課後は、秘密の時間…
市川君が、ここに?


ちょ、ちょっと待って。

会いたいって思ってるけど、こんな急じゃ心の準備が……


高鳴り始めた胸を押さえてると、ニヤニヤしながら、斉藤君があたしを見た。


「俺さぁ、拓真はクールなヤツだってずっと思ってたんだけど、それは間違いだったみたいなんだよね」

「?」

「あいつさぁ、あかりちゃんのこと話す時、」


斉藤君が続きを言おうとした、その瞬間、


「いつまでも触ってんなよ」


あたしの手を掴んでいた斉藤君の手が、バッと払われた。


「俺にまで嫉妬すんなよなぁ」

「うるせぇ圭」


その声で、雰囲気で分かる。

そこにいるのが、彼だって。


顔を上げるのが、少しだけ怖い。

でも――……


「……市川君……」


あたしが彼の名前を呼ぶのと、それは同時だった。

伸びてきた腕に、強く強く、抱きしめられる。


「……るしいよ、市川く、」

「――こうしてれば、逃げられねぇだろ?」

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