放課後は、秘密の時間…
一日ぶりの我が家。

鍵を開けて、市川君と一緒に中に入る。


市川君があたしと一緒にいるなんて、なんだか不思議な気分……


「へぇ~ここが先生の部屋かぁ」

「あんまり見ないで。恥ずかしいよ、散らかってるし」


実習が始まってからは、忙しくてろくに掃除もできてない。

こんなことになるんだったら、もっと片付けておけば良かったかも……


そんな小さな後悔をしながら、キョロキョロしてる市川君を置いて着替えを取りに行ったあたし。

その途中で、テーブルの上に置きっぱなしだったものが目に付いた。


それは、『教育実習の手引き』。



懐かしい……

つい一昨日まで実習生だったのに、懐かしいなんて変かな?


苦笑しながら、なんとなく手にとって、あたしはパラパラとページをめくった。


とあるページで、手がとまる。


――え?

これって……


「先生、何してんの?」


あたしを背中から抱きしめた市川君が、楽しそうに話す。


「俺、思ったんだけどさ。先生って、もう先生じゃないよな?何て呼べばいい?」

「………」

< 234 / 344 >

この作品をシェア

pagetop