放課後は、秘密の時間…
多分、先生は覚えてねぇと思うけど……

俺らが初めて会話したのは、先生が学校に来て2日目のことだ。


その日、偶然日直だった俺は、職員室のドアの前で日誌を片手に突っ立っていた。


何で、こんな緊張してんだろ?

ただ、日誌出しに来ただけなのに。


「――失礼します」


二宮先生は……ああ、いた。


忙しそうに、書類をパラパラとめくってるその姿は、まるで小動物みたいだ。


「センセ、これ、日誌です」


背中に声をかけると、先生はパッと振り返った。


「ありがとう!えっ、と……市川君よね?市川、拓真君でしょ?」

「そう、ですけど……何で、俺の名前?」

「ふふ。クラスの皆の名前、バッチリ覚えてるんだ」


得意げに微笑んだ先生を見た瞬間、


ドクン……


俺の心臓は大きく打った。


名前を覚えられてるだけで、笑顔一つ見たくらいで、バカみたいに喜んでる自分がいる。


その時、直感的に気付いたんだ。


――俺は、先生が好きなんだって。

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