放課後は、秘密の時間…
その次の日、彼氏のことを聞いた俺に、先生は、


「市川君には、関係ないでしょ」


瞬間、頭が真っ白になった。


気が付いたら、俺の下で、先生は小さく震えていた。

俺の手は、先生の涙で濡れていて。


……何してんだよ、俺。

こんなこと、するつもりじゃなかったのに――


傷つけて、泣かせたいワケじゃない。

まして、無理矢理俺のモンにしたかったわけでもない。


ただ、好きなだけなんだ。

好きで、自分でもどうしたらいいか、わかんねぇんだ。



サッカー部の連中が現われなかったら、俺は償いきれない過ちを犯してたかもしれない。


書類を出しに、慌てて職員室に走っていった先生を見送って、俺はその辺にあった紙に小さく、『ごめん』と書いた。


ひどいことして、本当は、面と向かって謝るべきなんだろうけど……

先生に「嫌い」だって、ハッキリ言われるのが怖くて、置き手紙を残すことしか出来なかった。


先生の泣き顔なんか、今まで十分見てきたけど。

もう二度と、あんな顔はさせたくないって、帰り道、ずっと思ってた。



次の日の朝、気まずそうに目を逸らす先生に、俺はなんとか笑顔を作って話しかけた。

まぁ、そのまま、学食で食う約束も、強引に取り付けたわけだけど。

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