放課後は、秘密の時間…
先生が「来るな」って言わないのをいいことに、俺は毎日美術室へ通った。

一日の中で、放課後が、俺にとって一番大切な時間だった。



――先生には、言わなかったけど。

この頃には、無理矢理キスしたあの写メは、削除してたんだ。


こんなもので脅して、先生のこと、また傷つけたくないって思ったから。

俺なりのケジメのつもりだった。



そんな日々が続いて、先生との距離も少しなくなったと感じた頃――……


「美術室には、絶対来ないで」


視線を彷徨わせて、弱々しく呟いた先生。


様子がおかしい。

ていうか、昼休みに会議があったなんて、嘘下手すぎだろ?


そう思って、放課後、美術室を覗きに行った俺は……

体中の血が、一気に逆流するような怒りに襲われた。


服を脱がされた先生の上で、ズボンのファスナーを下ろしている男。

先生は目をつぶってぐったりとしたまま、ピクリとも動かない。


俺の視界は真っ赤になって、もう何も聞こえなかった。


「……市川、許して、くれ……もう、二宮先生には近づか…ないから……」


はっと我に返ると、倒れたそいつが鼻血を拭って、切れ切れに懇願していた。


右手の甲がジリジリと痛む。

人を殴ったのは、初めてだった。

< 247 / 344 >

この作品をシェア

pagetop