放課後は、秘密の時間…
土曜の午後ということもあって、天気が雨にも関わらず、沢山の人が外出していた。


まぁ、俺もその一人だけど。


昨日、先生に言われた言葉が頭からずっと離れなくて……

部屋に一人でいても、余計落ち込むような気がして、外に出てみたけど、全然気は晴れない。


むしろ、振ってくる雨に、相合傘した先生を思い出すくらいだ。


あてもなく歩いて、交差点の赤信号に立ち止まった時、


「――市川君」


あの柔らかい声が、聞こえた気がした。


バカみてぇだ、俺。

こんなとこにいるわけねぇのにな……


幻聴なんて、どんだけ先生のことが好きなんだよ。


そう思って、顔を上げた俺は、横断歩道の向こう側に――

彼女の姿を見つけたんだ。


「――先生っ!!」


とっさに動き出した俺の足は、クラクションを鳴らす車に止められてしまった。


何で信号、赤なんだよ?


一秒でも待てねぇ。

早くしねぇと、先生が行ってしまう。


でも、そんな心配は、無用なものだった。

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