放課後は、秘密の時間…
「――雨かよ……」


黒い空から降ってくる線のような雨に、俺はため息を一つついた。


雨は好きじゃない。

運転には必要以上に気を使うし、何より、グラウンドが崩れてサッカーが出来なくなるから。


とは言っても、今は教育実習中だし、大学の部活は強制的に休まされてるけど。


腕時計を見ると、8時を少し過ぎたくらいだ。

まさか、指導案を書くのに、こんなに時間がかかるなんて思ってなかった。


随分、遅くなってしまった。


俺は駐車場に停めた車に乗り込んで、エンジンをかけた。


自宅から実習先のこの高校までは、かなりの距離がある。

そのせいか、車での通勤を許可してもらえたワケだけど、疲れてる日は運転することさえ面倒だ。


もう一度ため息をこぼして、俺は濡れた道路に車を走らせた。

いくつめかの赤信号で、反射的にブレーキを踏む。


ライトに照らされた暗い風景をなんとなく見渡して、ふと気がついた。

この辺りは、あかりの実習校の近くだ。


そのまま視線を動かしていると、バス停に立つ人影が映る。

心臓が、大きく動いた。


あかり……?

暗い闇に見えるシルエットは曖昧だけど、俺が彼女を間違えるはずはない。


そこには、確かにあかりがいた。

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