放課後は、秘密の時間…
そして、もう一人。

あかりの隣にいる、長身の男。


顔はハッキリと見えないけれど、学ランを着てるところを見ると、高校生だと思う。

あかりの実習先の生徒だってことは、容易に想像がついた。


だけど、どうして一つの傘なんか差してるんだ?


とりあえず声をかけようと、窓のスイッチに伸びた俺の手は、それを押すことなくピタリと止まった。


「あか……り……」


体中に悪寒に似た感触が走る。


俺は今、何を見てる?

これは、現実なのか。


あかりが、キスを――



突然鳴らされたクラクションに、ハッと我に返った。

いつの間にか変わっていた青い信号のランプに、アクセルを踏む。


何度も瞬きを繰り返したけれど、目に焼きついた光景がいつまでも消えない。

ハンドルを握る手は、少しだけ汗ばんでいた。


あれは、見間違いだったのか。

そうだと、信じたい。


そうじゃなければ、俺は――……


次々に浮かんでくる疑惑を押し込めて、通いなれた道路を走る。

向かう場所は、決まっていた。

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