放課後は、秘密の時間…
アパートの階段を上って、ドアの前にしゃがみ込む。

お揃いのキーホルダーがついた鍵を、俺はポケットの中で強く握りしめた。


『これ、合鍵……いつでも、好きな時に部屋にいていいからね』


そう言って、照れながら彼女がくれた部屋の鍵。

これを使って中で待つこともできるけど、俺はそうしなかった。


一体、どんな顔であかりが帰ってくるのか、この目で確かめたくて。


あれは、人違いだったんだと信じたい。

あかりはそんな女じゃない。


そう思いたいのに、それが出来ないのが現実だ。



しばらくして、階段を上ってくる足音に、俺は目をこらした。

俺に気が付いたあかりが、驚いた表情を浮かべる。


「……大也……?どうしたの?」

「どうしたって、あかりに会いに来たんだよ」


いつもなら、会えるだけで嬉しかったのに……

今は、それだけじゃない。


あかりの一挙一動を、全身で疑ってる俺がいる。

こんな冷たい話し方なんかしたくないのに、感情をうまく抑えられない。


自分でも、嫌になってくる。

たったあれだけのことで、俺はどうしてこんなに彼女を疑ってしまうんだろう?


この汚い不安を、早く消してほしい。

他でもない、あかり自身に――……

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