放課後は、秘密の時間…
雨のキスを見た時の、怒り。

「別れたい」と言われた時の、苦しみ。

彼女が心の中でアイツを想ってる時の、悲しみ。


俺が感じた全ての痛みを、あかりも味わえばいいと何度も思った。


だけど、いざ彼女が泣きそうになると、その理由の全てを取り払ってやりたくなる。

涙をこぼすと、優しい言葉をかけて、きつく抱きしめてやりたくなる。


やっぱり俺は、どうしようもなくあかりが好きなんだ。



冷たい指先を掴んで、行き先も決めずに歩き出した。

こうしていると、初めて手を繋いだ時のことを思い出す。


『あたし、冷え性だから……大也、冷たいでしょ?』


そんなことで、申し訳なさそうに俯く。

俺は、冷たさなんて、少しも気にならなかった。


――嬉しくて、嬉しくて。


小さなその手を暖められるのが、自分だって知った時、誇らしさに似た思いさえ感じてた。


あの頃の気持ちが消えたのは、いつからだっただろう?

隣にいることが当たり前だなんて、そんな思い込みをしてしまったのは。


あかりが、ずっと好きでいてくれるように――


そのための努力を、俺は何かしてきただろうか?


彼女の心が離れてしまったのは、俺にも原因があるのかもしれない。

今更、気付くなんて――

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