放課後は、秘密の時間…
『あたしことなんて、放っておけばいいのに』

『優しくされる資格ない』


涙声で投げてきた言葉に、あかりも傷ついてるのだと知った。


どれだけ悩んだのだろう?

どれだけ泣いたのだろう?


『別れたい』と言われる度に、傷ついていたのは俺だけじゃなかったんだ。


あかりの性格を思えば、そんなこと当たり前だったのに。

見過ごしていたのは、俺の目が汚い感情に曇っていたからなのかもしれない。



歩き続けていると、ふと、思い浮かんだ場所があった。


以前、気ままな旅をした時に、一度だけ行ったことがある海岸。

穴場のような場所だと地元の人に聞いたところだ。


あそこなら、きっと、誰もいない。

とにかく、二人きりになれる落ち着いた空間に行きたい。


涙を我慢してる彼女を思い切り泣かせてやりたかったというのもあるし、俺自身、静かな場所で頭を整理したかった。


――もう一度、あかりと向き合って話すために。



海に行くと決めた俺は、あかりを連れて駅に向かった。

人ごみを抜けて、券売機で二人分の往復切符を買う。


それを彼女に渡して、改札を通った瞬間――


あかりの顔が泣きそうに歪んだのを、俺は見逃さなかった。

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