放課後は、秘密の時間…
『あのね、大也は、あたしが初めて付き合った人……なの』


桜が舞い散る風景の中で、君は嬉しそうに言ってくれた。

その頬を、花びらと同じ淡いピンク色に染めながら。


あれは、付き合ったばかりの頃に、二人で近くの公園に花見に行った時だった。


俺は今でも、覚えてる。

あかりとのことなら、忘れるはずはないから。


あの頃の甘酸っぱい初々しさは、今の俺達の間には、もう存在しない。

けれど代わりに、傍にいることで感じられる安心感や、互いを大切に想う穏やかな気持ちを得た。


それは、思い出の数とともに、大きくなって。

俺の中の、一番キレイな場所で輝いていたんだ。



なぁ、あかり。


どうしたら、あの頃みたいに笑ってくれる?


もう一度、俺の前で。



「……ごめ、ねっ…ふぇ……ごめ……」

「いいよ、気の済むまで泣けばいい」

「……めん……たし……」

「いいから、泣いとけ」


声を押し殺して涙を流すあかりの背中を、何度も撫でてやった。

それしか、俺には出来なかった。


――これは、俺のために流した涙じゃなかったから。

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