放課後は、秘密の時間…
あかりを想って、ホームまで必死に追いかけてきたあいつ。

あいつを想って、俺の腕の中で泣き続けるあかり。


二人が想いあってるのは、一目で分かった。


だけど、あかりが今、こうしてここにいるということは、何かすれ違いでもあったんだろう。

本人達には見えないことでも、他人の目を通してみれば、こんなにも簡単に分かるものなのに。


その絆が脆く壊れかけてる今なら、あかりを取り戻せる。


だけど、それは、あかりのためになるんだろうか?


もしも、このまま彼女を手にしても、俺は――

一度裏切られた不信感から、あかりを独占欲でがんじがらめにして、束縛してしまうかもしれない。


俺の目の届かない場所に彼女が行く度に、どうしようもない不安を覚えて。

いつの日か、積もった苛立ちを彼女にぶつけてしまうかもしれない。


大切に想えば想うほど、きっと傷つけていく。

あかりもまた、俺への罪悪感に苦しんでいくんだろう。


時間をかけて、新しい関係を築くことは出来る。

だけど、彼女の言うように、今までのように戻れはしない。


割れたコップの、小さなガラス片までもを拾うことが出来ないように。


あかりを幸せにする自信はある。

けれど、今すぐにそうできるかと問いかけられたら、答えられない。


それが出来るやつは、たった一人だけ。

あいつだけだろうから。

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