放課後は、秘密の時間…
今の俺にできることは、一つ。


――あかりを、俺から解放してやること。


好きなのに。

体中がそう叫んで、彼女を求めてるのに。


どうして、この手で彼女を幸せに出来ない?

一度は手にしたハズだったのに、この腕からすり抜けていってしまう。


君が思い切り泣けるように、胸を貸してやることは出来ても。

君の不安や憂鬱を取り除いて、笑顔をあげることは出来ない。



「最後の誕生日プレゼント」


そう言って、俺は帰りの切符を渡した。

握り締めたせいで、それは少し折れてしまっている。


そんな顔をしないで。

お前が好きなのは、あいつなんだろ?


戸惑っている彼女の手を包み込んで、切符をその中に閉じ込めた。


少し冷えた指先。

あかりは、冷え性だもんな……


でも、この冷たい温もりが好きだったよ。


彼女の全てを、この目に焼き付けるようにただ見つめた。

俺のために伸ばしてくれた長い髪が、潮風に揺れている。


この手を、本当は離したくない。

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