放課後は、秘密の時間…
思い出を語れば、キリがない。

君と過ごした瞬間、交わした言葉のすべてが、そうなのだから。



『――大也』


波音と共に、鼓膜に反響する声。


思い出せば、その分痛みが増すだけだと分かってる。

でも、俺の中の君は、こんなに鮮明に存在してるんだ。


『大也……あの、ね?』


照れた時に頬に差す淡い色も、耳に優しい声のトーンも、可愛らしい仕草の一つ一つも。

記憶の中から、何度も再現してしまう。


『……すき、だよ……』


この手にまだ残っている、君の温もり。

きっと、あと数分もすれば俺の体温に混ざるんだろう。


何の跡も残さずに消えて。


『嘘……聞こえてるクセに』


大切に想ってる自覚は、十分にあったんだ。

でも、失って初めて気付いたよ。


『……も、大也のイジワル……』


いつの間にか、君の存在が俺の全てになっていたことに。


『……き……好き――……』

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