放課後は、秘密の時間…
あたしのばかぁ……

いくら寝ぼけてたからって、自分から抱きつくなんて……


「……ッ」


恥ずかしくて、思わず傍にあったタオルケットを顔まで引き上げた。

市川君がそれをくいくいと引きながら、楽しそうな声で話しかけてくる。


「先生、顔みせてよ」

「ヤ……だってあたし、今すごい顔してる」


連日(もちろん昨日も)泣いたせいで、目は腫れぼったいし。

寝起きで髪なんかボサボサで、顔もすっぴんで、しかも真っ赤になってるだろうし。


付き合ってからの、大事な大事な1日目なのに……

こんなの、ヤだよぉ。


百年の恋も、きっと冷めちゃう。


「俺、先生とキスしたい」

「……ッ……あ、あとで、なら……」

「今すぐがいい」


ぜったい、ダメ……

そんな声出してお願いしたって、ダメなんだから。


「ねぇ、こんな布越しじゃ嫌だよ」

「………」

「先生」


――結局。

甘い誘惑に勝てなくて、あたしはタオルケットをゆっくり引きおろした。

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