放課後は、秘密の時間…
「市川君、洗面台、借りてもいい?」

「いいよ、使って。昨日も言ったけど、棚にタオルとか全部入ってるから」

「ん。ありがとう」


洗面所に入って、一番初めに目についたのは、コップに立てかけてる2本の歯ブラシ。

1本は市川君の、もう1本は……あたしの。


昨日、ここに泊まるって決めた時に、急遽コンビニまで買いに行ったものの一つだ。


これから先も、こうやって……

市川君の部屋にあたしのものがどんどん増えてくのかな?


きゃあああ。

なんか、こういうのダメだ!

すっごい照れちゃうっ。


照れちゃうけど……でも。

「付き合ってる」んだって実感できて、やっぱり嬉しいな。


あたし、ホントに市川君の彼女になったんだよね……


その証拠が、このピンクの歯ブラシなんだ。

そう思うと、ただのコンビニの歯ブラシも、特別なモノに見えちゃうから不思議。


「……シアワセ」


自然と言葉がこぼれでて、自分でもびっくりした。

目の前の鏡には、ぽわんとした表情のあたしがいる。


一日中、こんなノロケた顔だったら、どうしよ?


なんて少しだけ心配しながら、あたしは支度にとりかかった。

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