放課後は、秘密の時間…
「――じゃあ、そろそろ帰ろっか」

「うん、そうだね」


自然と手を繋いで、すっかり暗くなった道を二人で歩く。

あたしの誕生日も、もうあと数時間で終わっちゃう。


「ねぇ、市川君……」

「んー?」

「今日、ありがとう……すごく楽しかったし、最高の誕生日になったよ?」

「なら良かった」


だけど……

ほんとはね、一つだけ気になってることがある。


それは、市川君に「おめでとう」ってまだ言ってもらえてないこと。

プリクラにも書いてもらったし、プレゼントもケーキも用意してくれた。


でも、一番欲しいのは、市川君本人の言葉なんだ……

――なんて、わがままかな……?



「そうだ、市川君……コレ、市川君に」

「え?」


バッグの奥に入れっぱなしだった、小さな紙の包みを渡すと、市川君は首をかしげた。


「今日のお礼……って言っても、気にいってくれるかわかんないけど、受け取ってくれないかな?」

「先生がくれたものなら、何でも気に入るって。礼なんて良かったのに……。でも、ありがと!今開けてもいい?」

「もちろん」

「あ、コレ――……」

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