放課後は、秘密の時間…
出てきたのは、絵を描く時によく使う、丸いパレットの形をした置物。

箱状になってて、ふたの部分に留め金がついてる。


「ふた、開けて」


言われたまま、鉄の留め金をはずすと……


「オルゴール……?」


辺りに流れ始めた、柔らかいメロディー。


これ、有名な……

パッヘルベルのカノンだ。

クラシックの中でも、あたしの好きな曲……


くるくる回ってるオルゴールの隣の空間には、指輪を差し込める溝が三段ついてる。


「本当はさ、指輪とか渡すのがいいのかもって思ったんだけど。俺ら、昨日付き合ったばかりじゃん?」

「……うん……」

「だから、先にそれを渡しとく。今はただのオルゴールの入れ物、だけどさ……」

「市川君……」

「この先きっと……誕生日とか、クリスマスに先生に指輪を贈るから」

「……っ……」

「それ、そこにセットしてよ……なんて、カッコつけすぎ?」


こんなの……

こんな嬉しいサプライズ、あっていいの?


だって、今日一日、ずっと一緒だったじゃない……


あたし、市川君がこれを用意してくれたのなんて、全然気付かなかったよ……?

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