放課後は、秘密の時間…
必死の抵抗もむなしく。

あたしは、市川君と二人きりで美術準備室に向かうことになってしまった。


隣の美術準備室へ向かおうとすると、


「先生、どこ行くの?こっちだって」


市川君に呼び止められた。


「谷村が言ってる美術準備室っていうのは、ボイラー室の隣の倉庫のこと。だから、こっち」

「倉庫?」

「うちの高校マンモス校だろ?だから、美術準備室だけじゃ用具全部置けなくて、倉庫を第二準備室にしてるんだよ」


谷村先生、そんなこと全然言ってくれなかった。

もしも一人で行ってたら、絶対わかんなかったな……


「だから俺が一緒に行くんだろ?」


タイミングバッチリで言われて、あたしは思わずパッと顔を上げた。


「あはは。先生、ほんと、わかりやす~」

「悪かったわね、単純で!」

「単純っていうかさ、可愛い」


か、わいい……?


「何ぽーっとしてんの。もしかして、照れてるとか?」

「はぁ?そんなこと、ありえません!」


照れてるとか、絶対そんなんじゃない。

可愛いなんて、言われ慣れてなくて、びっくりしただけ。


……そうに決まってるよ。

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