放課後は、秘密の時間…
沈み込んだ気持ちを必死に押し込めていると、


「先生」


低い声が聞こえた。

この声って、


「……市川君?」

「うん」


何で倉庫の中から、市川君の声が聞こえてくるの?

さっきまで、何も聞こえなかったのに……


「何で……あたしのこと、閉じ込めたんじゃなかったの?」

「そんなことしないよ」

「だって、いくら呼んでも返事してくれなかったじゃない!」


振り向こうとしたけど、それができなかった。


背中に、自分とはべつの体温を感じる。

市川君が、背後からきつくあたしを抱きしめていた。


「やっ、市川君、放してっ……」

「黙れよ」


もっと強い力で羽交い絞めにされて、少しも動くことができない。

彼の声は、さっきまでとはまるで違う、冷たいものだった。


「俺、今すげームカついてるんだ」

「……え……?」

「あの態度、何なんだよ?」

「態度?」

「授業中。俺のこと、全然見ようとしなかった」

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