放課後は、秘密の時間…
苛立たしげに、市川君は早口で続けた。


「ああいう態度とられると、ムカつくんだよ。他の奴らには笑顔ふりまいて、俺のことだけ無視して」

「そんなこと、」

「してたよ。一度も俺と目ぇ合わせなかったじゃん」


確かに、彼の言う通り……

あたしは一度も彼と目を合わせようとはしなかった。


授業中だけじゃなくて、朝のHRも、休み時間に廊下ですれ違った時も、ずっと彼のことを避けてた。


でも、そうさせてるのは市川君だよ?

市川君があんな写真なんか撮るから。


あたしのこと、好きだなんて言うから……


「もう無視なんかすんなよ」

「………」

「今度あんな態度とったら、わかってるよな?」


市川君の口調は、いつもより少しだけ乱暴だ。


「先生は、俺に逆らえない。俺のこと無視するのなんか許さないから」


また避けたりしたら、あの画像をみんなに回されるかもしれない。

そんなことになったら、あたしは……


「ねぇ先生。さっきも言ったけどさ、俺すげー怒ってるんだよ」

「……市川君……」

「それもムカつく。名前で呼べって言ってんのに、まだ市川君って呼んでる」

「だって、あたしは、」

「先生だから?聞き飽きたよ、そのセリフ。関係ないって何度言ったらわかるんだよ」

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