放課後は、秘密の時間…
「キスするまで、ここから出さないから」

「そんな……」

「先生、ほら早くしてよ。あんまり遅いと、谷村が心配して来るかもよ?そしたら先生も困るだろ?」


谷村先生が、今来たら――

あたし達のこと見て、どう思うんだろう?


こんな暗い密室に、生徒と二人きりでいるあたしのこと、どんな目で見る……?


「でもこんなとこ見られたら、市川君だって、」

「俺?俺は平気だよ。今までいいだけ優等生やってきたんだから」

「………」

「だけど先生は違う。俺は被害者になるけど、先生は加害者になる」

「あたしが、加害者……?」

「真面目な優等生を誘惑した教育実習生って、問題になるだろうなぁ」


楽しそうに笑いながら、市川君はあたしの行動を待ってる。


市川君は……全部、計算してやってるんだ。

この状況を見られて一番困るのがあたしだっていうことも、あたしが彼に逆らえないっていうことも、知っててやってるんだ。


でも……

でもっ――!


「できない、キスなんてできないよ……」

「へぇ?先生、随分強情だね」

「お願いだから、こんなこともうやめて」

「谷村、もうすぐ来るだろうな。その後が楽しみだね、先生?」

「……っ……」

「あの写メも一緒に見せたら、あいつ、どんな顔すんのかな?」

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