放課後は、秘密の時間…
すぐに熱くなって、ヒリヒリ痺れた手の平。


……あたし、今……

市川君のこと……叩い、た?


「……あ……ごめん、なさ……」


平手打ちなんかして……市川君、きっと怒ってる。


「……んなに……」


声と同時に痛いくらいに腕を握られて、思わず目を閉じた。


叩かれるっ……!


だけど、あたしに触れたのはそんな暴力じゃなくて――

むしろ、優しささえ感じるような腕だった。


市川君の胸の音と、学ランのボタンが頬にあたる感触。

何度もこうされて、もう覚えてしまった香水の甘い香り。


一瞬で引き寄せられて、あたしはまた彼の腕の中にいた。


どうして?


叩かれるって思ってたのに……

どうして、こんなに優しい腕で抱きしめるの?


「そんなに俺のこと嫌いかよ?」


『そうじゃない』

そう言いそうになって、あたしは言葉を止めた。


今、何を言おうとしてた?

そうじゃないって否定して、どうするつもりだったの?

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